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■2010/12/13(月)　№361　難しいことから逃げる大人と、その賛同者のつけが・・・　

　先日、小学校高学年のお子様を持つある保護者が、先生を交えたＰＴＡの会合で、「社会で起こっているさまざまなことを少しずつ子ども達に教えてほしい」と話されたところ、他の保護者から、「小学校高学年にはそのようなことは難しいから無理だ」との意見がありショックだったと言われました。社会で起きているさまざまな出来事について子ども達に教えてほしいと言われたこの保護者は、「狭い範囲の与えられる勉強だけでなくいろいろなことに関心を持ってもらいたい」という願いから話されたのです。テレビの池上さんとまではいかなくてもわかりやすく教える方法は工夫すればあるにも関わらず、１人の保護者の方がこの「難しい」の一言で大切な提案をシャットアウトしてしまったわけです。
　この状況をみなさんはどうお考えになるでしょうか？学校の教科書にはないいろいろな出来事、現在起きているニュースなど、子ども達が関心を示すものや教えておくべきことは数多くあるはずです。その関心を示す可能性のあるものを、あえて奪ってしまうのが「まだ難しい」、「難しいから無理だ」などの発言です。ひょっとしたら、５科目の勉強以外にあまり価値を置いていないのかもわかりません。そもそも、難しいから勉強するわけですし、難しいことを少しずつ理解することにこそ意義があるわけです。一方、簡単で優しいことの繰り返しの勉強は親子両方にとって楽ですが、親子の人間的成長や意欲、好奇心にはあまりつながりません。いつまでも同じ位置で進歩のないワンパターンの繰り返し勉強は、貴重な時間を失うばかりか結局子ども達のやる気を奪い、勉強の醍醐味や本当の楽しさ、重要性に気づけなくなります。
　本当の勉強とは、自分の知らない未知の世界へ自主的に踏み込み、ひとつずつ自分なりに解明していくことで自信を深め、人間的成長をはかることに大きな意味があると私は考えています。すぐに機械で答えが出るようなものや、同じパターンの繰り返しのようなものから、本当の意味の勉強の楽しさは生まれないでしょう。そして、本当の勉強の意味がわからなければ、昔からずっと言われている「人生、一生が勉強だ」という生きる上で重要な教えも理解できない大人となるでしょう。
　ただ学校や大人が言うから受験の為の勉強をするだけで、受験が終われば「バーンアウト」、つまり燃え尽き症候群で何もやる気がなくなり、結局、一生大切な受験以外の勉強、つまり生き抜いていく上で必要な「世の中の状況を知る」、「何が必要かを考える」、「自己の能力を高める」などの勉強をしない若者になる理由がここにあります。難しい、変化の激しい世の中を生き抜く為にこそ難しいことを少しずつ学ぶ必要があるのです。特に、現代のように競争が激しい難しい社会に出ていくには、小さい頃から優しくてわかりやすいワンパターンのことばかりをしていただけでは、将来、社会不適応を起こし、あえて難しいことに挑戦する若者にはならないでしょう。
　始めに書いたＰＴＡ会合での一部の保護者の「難しいから無理」という単純な発言の切り捨てにより、優しいことを続け重要なことを先延ばしするという気楽な結末がひ弱で社会に対応できない多くの若者を生む原点になっている、という重要な事実に大人は気づく必要があります。
　今回のＰＴＡの保護者のように、難しいことから逃げるという日本人の逃避ぐせに賛同する大人の集団意識のつけが、現在の意欲のない若者をつくっているひとつの大きな原因であると私は考えています。

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